いよいよ和音博士のチュートリアルも最終章。今回は残っていた激濃味編です。これまでお疲れさまでした。もちろん、とりあえずの説明(解説)が終わるだけで、今後も折に触れてこのブログに和音博士は登場すると思いますが、一旦区切りをつける形にしたいと思います。今回はチュートリアルをみていきます。
この記事でわかること
激濃味の中身は?
チュートリアルの進行
今回追加のコードたち
こちらになります
参考までにぼくのやっているおさえ方はこちらです
メジャーコードの置き換え
中身としてはシンプルに基本コード(ダイアトニックコード)から長調・短調が入れ替わったコード。具体的にはコードの第1音と第2音の間隔が4半音(メジャーコード)なら3半音(マイナーコード)になります。
Ⅰに対してⅠm (sDmに対してsDme)
Ⅳに対してⅣm (Fldに対してFled)
Ⅴに対してⅤm (Strに対してSter)
を入れ替えてみる、をチャレンジします。
マイナーコードの置き換え
当然その逆もアリなのですが、マイナーがメジャーになるのは基本的にはセカンダリードミナントで既出ですね。メジャーのダイアトニックを置き換えるコードとして裏コードと同じく進行先のコードに対して半音上からアプローチするコードを考えることができます。
Ⅱmに対して 進み先はⅤなので bⅥ(flRに対してLedme)
Ⅲmに対して 進み先はⅥmなので bⅦ(stMに対してTerf)
Ⅵmに対して 進み先はⅡmなので bⅢ(Ldmに対してstMe)
を入れ替えてみる、をチャレンジします。
ここで#Ⅴと書かないのはルートの次の進行先が下がる(フラットする)方向であることを明示するためではないかな?と思います。逆に半音下からのアプローチが#dimでしたよね。
そして、今気づきましたが、なんとこれらのコードは後で見るようにナチュラルマイナースケールのダイアトニックコードでもあります。追加されたⅡm7b5(fledR)もマイナースケールのダイアトニックですね。bのついたコードからは適宜メジャースケールのしかるべき進行先に戻ってくることが可能です。
チュートリアルの音を聞いてみよう
ご自身も和音博士のアプリをタップして音を確かめてみて下さい。ぼくは自分のおさえ方で音をだしていきます。
Ⅳm
Ⅰ→Ⅳ→Ⅳm→Ⅰ
sDm→Fld→Fled→sDm
Ⅰ→Ⅳ→Ⅳm→Ⅴ7
sDm→Fld→Fled→Strf
Ⅴm
Ⅴm7→Ⅰ7→Ⅳmaj7
Sterf→steDm→Fldm
Ⅴm7→Ⅴm7→Ⅳmaj7
Sterf→Sterf→Fldm
Ⅳm7→Ⅴm7→Ⅴ
Fledme→Sterf→Str
Ⅲm7b5→Ⅵ7→Ⅱm7
sterM→sLdim→fldR
Ⅴm7→Ⅵ7→Ⅱm7
Sterf→sLdim→fldR
bⅦ、bⅥ
Ⅰ→Ⅰ→Ⅵm→Ⅵm→bⅥ→bⅦ→Ⅰ→Ⅰ
sDm→sDm→Ldm→Ldm→Ledme→Terf→sDm→sDm
Ⅰ→Ⅵm→Ⅱm7→Ⅴ7→Ⅳm7→bⅦ7→Ⅰ→Ⅰ
sDm→Ldm→fldR→Strf→Fledm→siTerf→sDm→sDm
Ⅰ→bⅦ→bⅥ→Ⅴ7
sDm→Ledme→Terf→Strf
Ⅵ→Ⅴ→Ⅳ→Ⅲ7
Ldm→Str→Fld→sitrM
Ⅵ
Ⅰ→Ⅰ→Ⅵm→Ⅵm→Ⅳ→Ⅴ→Ⅵ→Ⅵ
sDm→sDm→Ldm→Ldm→Fld→Str→Ldim→Ldim
Ⅰ→Ⅰ→Ⅵm→Ⅵm→Ⅳ→Ⅴ→Ⅵsus4→Ⅵ
sDm→sDm→Ldm→Ldm→Fld→Str→Lrm→Ldim
同主短調について
これまでの考え方
これまでこのブログではマイナーキーは特に独立したキーとしては考えずメジャースケールがLaから始まったものとして扱ってきました。メロディを歌う(覚える)場合には、転調しない限りDoの位置が移動しない方がわかりやすいし覚えやすいのは間違いないと思います。もし曲にCからはじまるマイナースケールが出てきたとしたら、それはCがLaの音という事を意味していますから、DoはEbと考えればよいことになります。
CマイナースケールはEbメジャースケールと同じ。ダイアトニックコードについてもこれを出発点にして考えます。マイナースケールにはナチュラルのほかにハーモニック・メロディックの2種類の上行形がありますので、実際にはもう少し複雑ですが、私たちはすでに黒鍵の音も歌えるようになっていますので、DoはEb、LaはCのままで対応できます。
同主調の考え方を導入
一方、同主短調では、例えばCメジャーに対してCマイナースケールを主音dを同じCにして考えるということになります。なぜこの考え方が必要か?というと、おそらくですが、メジャーコードとマイナーコードを自由に行き来するためだと考えられます。コードのルートが共通だと、メジャーとマイナーの違いはあっても「同じコード」だ、と簡単にわかるので、入れ替えられるかの検討がラクになります。自分で歌ったり、曲を覚えて弾くだけなら必要ありませんが、作・編曲者にはメリットがあると言えます。作曲やアレンジでは必要になるでしょう。
メジャー・マイナーを交互にならしてみる
メジャーとマイナーのダイアトニックコードは以下のとおりです。
ダイアトニックコード(3和音)
Ⅰ | Ⅱm | Ⅲm | Ⅳ | Ⅴ | Ⅵm | Ⅶmb5 | |
sDm | flR | stM | Fld | Str | Ldm | Trf | |
Ⅰm | Ⅱmb5 | bⅢ | Ⅳm | Ⅴm | bⅥ | bⅦ | |
sDme | fleR | steMe | Fled | Ster | Ledme | Terf |
ダイアトニックコード(4和音)
Ⅰmaj7 | Ⅱm7 | Ⅲm7 | Ⅳmaj7 | Ⅴ7 | Ⅵm7 | Ⅶm7b5 | |
stDm | fldR | strM | Fldm | Strf | sLdm | lTrf | |
Ⅰm7 | Ⅱm7b5 | bⅢmaj | Ⅳm7 | Ⅴm7 | bⅥmaj7 | bⅦ7 | |
steDme | fledR | sterMe | Fledme | Sterf | sLedme | leTerf |
bⅢ・bⅥ・bⅦの使い方
チュートリアルにあった進行について調べてみました。
ピカルディー終止
bⅥ→bⅦ→Ⅰ
Ledme→Terf→sDm
ピカルディ終止(Picardy Third)は、短調(マイナーキー)の楽曲において、楽曲の終わりを長調(メジャーキー)の和音で終える技法です。これはバロック時代やルネサンス時代の音楽でよく見られましたが、現在でも使用されることがあります。
特徴と効果
- 和音の構成:
- 短調の曲では、通常、終止和音は短三和音(m)で終わります。例えば、A minorの曲はA-C-Eの和音で終わります。
- ピカルディ終止では、この短三和音を長三和音(M)に変えて終わります。つまり、A minorの曲はA-C#-Eの和音で終わることになります。
- 感情的な影響:
- 短調の曲は通常、悲しげで暗い感じを持つことが多いですが、最後に長調で終わることで、希望や明るさを感じさせる効果があります。この突然の変化が、曲全体に対して意外性やドラマ性を与えます。
- 音楽的な役割:
- ピカルディ終止は、曲の最後に安定感を与える役割も果たします。長三和音は、短三和音に比べてより明確で決定的な終止感を持つため、曲の終わりをより強く印象付けることができます。
使用例
- バロック音楽:
- J.S.バッハの多くの作品にピカルディ終止が見られます。例えば、彼のフーガやカンタータなど。
- ルネサンス音楽:
- 多声音楽やミサ曲においても、ピカルディ終止がしばしば使われています。
- クラシック音楽以降:
- モーツァルトやベートーヴェンなどのクラシック音楽の作曲家もこの技法を使用しましたが、ロマン派や現代音楽においては、ピカルディ終止はそれほど一般的ではありません。
実例
例えば、バッハの「平均律クラヴィーア曲集」第1巻の第4番BWV 849の終わりは、B minorのフーガですが、最後の和音はB major(B-D#-F#)で終わります。これが典型的なピカルディ終止の例です。
ピカルディ終止は、音楽理論の中で古典的な技法として学ばれるものであり、歴史的な文脈や作曲技法の一環として非常に重要です。
バックドアドミナント
Ⅳm→bⅦ→Ⅰ
Fled→Terf→sDm
バックドアドミナント(Backdoor Dominant)は、ジャズやポピュラー音楽において使用されるコード進行の一種で、ドミナント・セブンスコード(V7)の代わりに使われる特定の和音を指します。通常のドミナント進行に比べて、柔らかく、独特の雰囲気を持つサウンドを生み出します。
概要
バックドアドミナントは、トニック(I)に解決するために、フラット7度(♭VII7)から進行するものです。具体的には、以下のように進行します:
- 通常のドミナント進行: V7 → I
- バックドアドミナント: ♭VII7 → I
具体例
例えば、Cメジャーキーの場合を考えてみましょう:
- 通常のドミナント進行: G7 (V7) → C (I)
- バックドアドミナント: B♭7 (♭VII7) → C (I)
理論的背景
バックドアドミナントは、ブルースやゴスペルの影響を受けており、トニックのサウンドを強調するための技法として使用されます。フラット7度の和音は、通常のドミナント和音に比べて、異なる解決感を持ち、独特の緊張感とリリースを生み出します。
使用例
- ジャズスタンダード:
- デューク・エリントンの「サテン・ドール」など、多くのジャズスタンダードでバックドアドミナントが使用されています。
- ポピュラー音楽:
- ビートルズの「In My Life」など、ポピュラー音楽でもこの進行が見られます。
実際のサウンド
バックドアドミナントは、ジャズの即興演奏や作曲において、標準的なV7からの解決を避けるために使われることが多く、より豊かで変化に富んだ和音進行を提供します。
まとめ
バックドアドミナントは、音楽における和音進行の一つで、トニックに解決するための代替のドミナント・セブンスコードとして機能します。この進行は、通常のドミナント進行とは異なる解決感を生み出し、ジャズやポピュラー音楽において頻繁に使用されます。音楽の多様性を高めるための重要な技法の一つです。
----引用ここまでーーーー
Ⅵについて
Ⅵは一見Ⅵmのメジャー化のように見えますが、Ⅵは同主調のダイアトニックコードにはありません。つまり「完全に他調のコード」と解説されています。ピカルディ進行と同じように使われて、Ⅳ(Fld)→Ⅴ(Str)→Ⅵ(Ldim)と進行し3度下のキー(例えばkey=Cからkey=A)に転調します。
いかがだったでしょうか?
今回で和音博士のコードについての解説回は一旦終了となります。ちょっと駆け足になってしまいましたが、これでマイナースケールのダイアトニックも攻略できましたので、あとは手に付けていく作業かな?と思います。接続してスムーズに進行するかどうかは耳で聞いてのジャッジになりますので、鍵盤で試せるようになるのが一番ではないでしょうか。音については引き続き作っていきますので、今後ともお付き合いください。